|
|||||||||||
|
|||||||||||
<HOME <前に戻る |
|||||||||||
フランシスコ・ザビエル神父はポルトガル国王の要請をうけ、アジアインドでの布教の拠点、オールドゴアにいた。
父親を殺し、日本を逃れた安次郎は人を殺めた罪に苦しみ、ガレオン船の祭壇の前で、イエズス・キリストの祈りに出逢う。更にその教えを深めたくなり、ザビエル神父を訪ねてオールド・ゴアにやってきた。安次郎は聖パウロ学院でキリスト教の教理を学び、神父から洗礼を受け、洗礼名はパウロ・デ・サンタ・フェであった。 ザビエル神父が日本でゼウスの教えを広げる手助けをすべく、神父と共に志那の海賊・王直のジャンク船で日本に向かう。安次郎の故郷・薩摩の地をふたたび踏み、一宇治城にすむ島津家の当主、貴久に拝謁。 この地での布教の許可をえて、その活動がはじまった。 石見銀山を奪取してそこにポルトガルの要塞を築き、石見を征服するという計画をたて、ポルトガル国王軍の小銃隊長・ティオゴ・バラッタはポルトガル国王・ジョアン3世に謁見した。国王はその計画を承認し、ジャポン海域の調査権とその費用をバラッタに与えた。 ザビエル神父と安次郎が苦しいながらも布教を地道に一歩一歩進める日々である。その日本でのザビエルの神父の布教を利用して石見銀山を調べるためにバラッタはモルッカからやってきた。 ザビエル神父がポルトガル国王から日本での布教に多額の援助を受けていること見抜き、銀山のある山口で布教をするように仕向けザビエルの信仰を利用して大内や尼子の緒豪族を手なずけ、バラッタは石見銀山の採掘権を手にした。 銀山を征服するためにバラッタに協力したこと、大内殿に兵器を送ったことなど神父の行いは神の教えに反していると安次郎は「ザビエルあなたは嘘つきだ」と増悪の炎を燃やし、訣別を宣した。 ザビエルは安次郎に会の同宿からの除名を言い渡した。 安次郎は首に掛けていたいた木の十字架をはずし、ザビエルに手渡した。 布教に身も心も捧げ、疲れ切ったザビエルはバラッタと共に日本を離れ マラッカに向かった。 マラッカ長官から石見銀山征服計画の承認を取り付けたバラッタは14隻の艦船と2900人の戦闘態勢を整え。7月になってマラッカを出帆した。 バラッタの武力での石見銀山の制圧を何としてしても阻止せねばと安次郎は五島の深江島(現在の福江島)の王直を訪ねた。 王直は「命をかけて仲間を助けることことができるか」と問われた安次郎は「……命を懸けて」と答えた。さらに「血をもって誓えるかと」といった。 そして血の儀式が行われた。 「あとは、おれたちにまかせろ」と王直はいった。 バラッタの艦隊は石見の温泉津の港に入り、上陸の手はずを整えていた。 王直の千隻を超えるジャンク船は五島列島・対馬海峡を南西の風に乗ってバラッタの艦隊を後ろから追まり、バラッタの艦隊がかすかに霞んで見える、石見の温泉津が目の前の洋上にいた。 王直はいった。「今夜の内に襲撃しよう。月は雲に隠れるだろう」海戦は王直の作戦通り有利に進んだ。どのガレオン船にも、すき間なくジャンクが群がり、男たちが乗り移り、火を放ち、ガレオン船は焼け落ち、大爆発を起こしている。 安次郎はバラッタの乗っているサンティアゴ号に乗り移り、バラッタを船底の樽のかげで見つけた。安次郎はバラッタを中央甲板の王直の前につきだした。 「殺せ」安次郎に命じた。 石見沖での海戦が終わって、王直は船を温泉津沖から五島に向けた。 こんどはシンガプラに向かうという。安次郎と辰吉も乗せてもらった。五島を出帆して上川島(サンシャン)に立ち寄った。 そこで思いがけもなく、痩せて、憔悴しきっている。黒い法衣を着て、手に十字架を握り、目を閉じているザビエル神父に出逢うのである。安次郎は王直の許しを得て、ザビエル神父の看病をすることにした。 12月2日の夜明け、銀に翻弄された聖なる生涯を終えた。 ザビエルの聖骸はマラッカの丘の上の聖母教会の地下に石組みの霊室をつくって棺のまま納められた。 年末になってまた取り出され、安次郎に付き添われこんどはゴアに運ばれた。 ゴアでは聖パウロ学院の聖堂に納められた。3日間、参拝が許されると、ザビエルの徳をしたって数千人の信者が集まった。 安次郎は学院のすぐそばの森に小屋を建て、静かに暮らしている。 「おまえまで、付き合わせてすまんな」 謝ると辰吉は首をふった。 「いえ、旦那様のおかげで、波瀾万丈の楽しい人生を過ごせました」 悔いはないといってくれた。 暇があると、安次郎は学院前の石にすわって、じっと屍を納めた聖堂を見つめていた。 おれが死んだら、いつもすわっているあの石を墓にしてくれ。 辰吉にそう頼んある。 いま、こうして書き綴ってみると、人生のすべてが夢だった気がしてくる。いまも夢のなかにいるかもしれない。 そんな思いを抱きながら、この手記のペンを擱く。 出典:山本兼一(著) 「銀の島」 朝日新聞出版 |
|||||||||||
つづく |
|||||||||||
|
|||||||||||
|
|||||||||||
|
|||||||||||
<前に戻る <HOME |
|||||||||||
アイティデザイン研究所 Copyright © 2002-2004 it dsagin All rights reserved. |